「動点」の問題を攻略するには、何を、どうすればよいか!
次の順に解説します。
①基本的な考え方を理解する。 ②例題からポイントを習得する。 ③実践する。
多くの人が動点の問題を苦手としているようですが、その要因は何でしょうか?
例えば、「道のり・速さ・時間」の理解が不十分。「動点の移動によってできる図形」を正確に捉えられない。「基本的な図形の性質」を活用することができない。等が考えられます。
ほとんどの問題は、「動点の移動でできる図形の面積や体積を考えること」が中心課題ですが、動点の入試問題を得意にするには、空間における直線と直線、面と面、直線と面の位置関係(平行、距離、垂直、ねじれの位置など)の理解、そして、それらを活用する力が不可欠です。
そこで、私は、その課題解決の過程を以下のように考えました。
第一に、動点PやQの速さから、それぞれが移動した距離を求め、各辺の長さを具体化することで、「速さの問題」を「図形の問題」に置き換える。
それには、道のり、速さ、時間の関係を十分理解することが大事です。
第二に、動点の移動によって、「できる図形」を正確に捉える。
それには、図形の形が変わる動点の位置を押さえ、それぞれの図形に対応した移動範囲を場合分けする。
特に、動く点によって変化する図形(三角形、三角錐、四角錐等)の「底辺、底面、高さ」を正確に捉えることが大事です。
第三に、図形の面積や体積の「底辺と高さ、底面積と高さ」の関係を活用する。【重要】
・形の異なる三角形(平行四辺形等)では、底辺と高さが等しければ、それらの面積は等しい。また、形の異なる錐体(三角錐、四角錐等)では、底面積と高さが等しければ、それらの体積は等しい。
・動点の移動によって変化する図形の底辺、高さ、底面積に着目し、変わる値と変わらない値を見つける。〈例:底辺は一定。高さが変わる〉
次に、変わる値をx として、面積や体積をxを用いた式で表す。その際、xの変域を明確にする。
第四に、底辺、底面積、高さを求める際は、基本的な図形や相似の性質、三平方の定理等を活用する。高校入試では、「相似の性質」を活用する問題が頻出です。
第五に、グラフが示された問題では、縦軸、横軸がそれぞれ何を表しているかをハッキリさせる。例 縦軸:面積 横軸:時間
特に、グラフの型が変わる際の座標を明確にすることが大事です。
【「動点の問題」攻略に必要な基礎的・基本的な知識・技能】
○「相似」:形が同じで、大きさが違う。(同じ場合もある〈合同〉)
・形が同じ(相似)ならば、当然、対応する角の大きさは等しい。
○「三角形の相似条件」
・3組の辺の比がすべて等しい。
・2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しい。
・2組の角がそれぞれ等しい。
○基本的な図形の性質
・錯角、同位角、対頂角
・正方形、長方形、立方体、直方体、三角錐 ・正三角形、直角二等辺三角形
・三平方の定理(30°60°90°の直角三角形、45°45°90°の直角二等辺三角形等)
◎誰も教えてくれない「空間図形の性質」を活用するためのポイント
Ⅰ.立体を構成する平面に着目し、考察を加えることで、基本的な図形の性質を活用できるようになる。
・正方形、正三角形、二等辺三角形、直角三角形、直角二等辺三角形、長方形、正方形、ひし形、円、正三角錐、正四角錐等の性質。
・平行、垂直、ねじれの位置、錯角・同位角、等の性質。
これらの性質を吟味することが、「三角形の合同・相似条件の活用」につながる。
◎問題解決へ向け、一つ一つのアイデアがつながり、空間図形の問題ができるようになる!
Ⅱ.線対称な図形の性質を立体の考察に利用できる力を身に付ける。
・軸の左右に合同な基本図形、合同な立体、さらに、相似な図形、相似な立体ができる。
・軸は、「折り目」、「切り口」を考えることが多い。
・例えば、赤線で切ると、合同な立体ができる。
・合同とは、対応する面、角、辺がすべて等しい。
・相似とは、形が同じで大きさが違う図形。(同じ場合もある:合同)
・相似比「1:2」とは?
・対応する角の大きさは、等しい。
・対応する辺の長さは、それぞれ2倍になると考えると、簡単に分かる。
・「高さ」も2倍であることに、気付く力を身に付ける!
○比の式 A:B=C:D
⇔ AD=BCを利用すれば、複雑な数値の問題もできる。
Ⅲ.体積は、底面積×高さ →「底面」と「高さ」が決まれば、体積が決まる。
・したがって、複雑な問題では、「底面積」と「高さ」に着目する!
・立方体、直方体:底面積×高さ
・三角錐、円錐:?×底面積×高さ
※複雑な立体:(三角錐)+(三角錐)、(三角錐)+(直方体) 等のアイデアも必要。
○次の「四角錐の体積は等しい」という見方を身に付ける。
・なぜなら、「底面積」と「高さ」がそれぞれ等しい。
・頂点をA面上で、どこに移動させても、「高さは一定。」
・「等積変形する」というアイデアを身に付ける。
・面積や体積の大きさを変えずに、求めやすい図形に変形する。
〈ポイント〉「底辺」「底面積」と「高さ」に着目する!
次に、辺と辺、面と面、辺と面の平行・垂直等の位置関係をつかむ。
・下の直方体で、高さ(赤線)は等しい。
・難しい立体の問題でも、互いに平行な直線、互いに平行な面、それらに垂線な直線や面に着目することで、「底面」と「高さ」を必ず見つけることができる。上図がその基本です。